https://www.gundam-seed.net/freedom/
観 て く れ!!!!
(観た人は)良かったよな!!
本気でそう言える映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」を公開日初日に観てきました。
ガンダムシリーズはもちろん長いお付き合いなんですけれど、SEEDという作品は私にとって今だから言えるけれど「好きですか?」と聞かれると非常に返答に困る作品のひとつでした。
おそらく私と同じSEEDリアルタイム世代の方だとSEED放映時に「これはおもしれ〜ガンダムだ!!」とテンションが上がった一方、SEED Destinyのラストがあまり腑に落ちなくて「あれは何だったんだ…」みたいなしこりのようなものを残してしまい、そのままSEED FREEDOMまで醸成されないまま長い時を過ごした方も多いのではないかと思っています。
そんなリアタイ世代にとって切っても切れないとも言えるガンダムSEEDが20年の時を経て舞い戻り、しかも初動3日間で約10億円の興行を叩き出すという異例のヒットとなってますが、これは裏を返せばエヴァの呪縛ならぬSEEDの呪縛から解放されたい人がそれだけいらっしゃったんじゃないかと思いますね( ´,_ゝ`)
私はそんな1人だったのですが、SEED FREEDOMを見る上でHDスペシャルエディション(総集編のやつ)をdestinyまで観た上で映画を鑑賞した私も見事に魂の浄化に成功した訳です。
あまりにも魂が震えたことあって、でもTwitterでネタバレ含めて感想も呟くことも憚られると思い久々に筆をとり読んだ人と共に一緒に浄化されたい所存なのです。
デスティニーを見ていた2024年の君へ
SEED FREEDOMのあらすじとかはもういいと思うんですが、ほんとデスティニーを見ていた人からすれば地続きの完結を見せてもらったという気がしてならない作品だなと私は思うんですね。冒頭でもデスティニーのボス的存在であるデュランダル議長の言葉にはじまり、彼を否定した世界で奮闘しながらも答えが出せず葛藤しているキラの姿からはじまります。
その後はラクスに愛されている姿をスクリーンで見せつけるも准将となったキラはそれより世界平和と選択への重圧から向き合えず絵に描いたようなワーホリに。お前、まるで20年来に劇場に来た俺たちと同じような社畜にならんでも
https://www.gundam-seed.net/freedom/character/chara5.php
そんな彼を支えるのは前作で敵対関係にあったシン・アスカやルナマリア・ホーク、そして彼と悲劇の別れを告げた女と声が一緒のアグネスなど世界平和監視機構コンパスのメンバー。しかし優しさ故に他者へ頼ることができないキラは仲間ばかりかラクスさえにも悩みを告げることができず、その弱みにつけ込まれる形でオルフェ率いる新たな人種「アコード」たちの策略に落ちてしまう…
俺は昔からアスカガ派でした
そんな窮地を救ったのがキラの親友であるアスラン・ザラとかいうSEEDFREEDOMで最もおもしれー男。
アコード達の動きをカガリの元で秘密裏に調査していたアスランは、絶滅手前でアークエンジェル一行の救出に成功。しかしラクスはアコード達の手に落ちてしまい、再び世界は大きく二分される寸前となってしまう。
デュランダルやクルーゼが問いかけた人が簡単に戦争を放棄しないという言葉や、デュランダルが提唱しアコード達も掲げる「デスティニープラン(人は生まれ持った人生を歩むことで戦争が無くなるという考え)」を否定した責任に雁字搦めとなり、ついに自分の信念であった世界平和への道を閉ざそうとする。
「甘ったれるな!!」
そこにすかさずアスランの鉄拳制裁。過去作では一度も見られなかったキラの弱りきり絶望する姿と、まるでカミーユが如く迷いのないパンチに私も劇場で(心の中で)ガッツポーズをしていた。
私は本当にこのシーンが好きで。単純にアスランが好きな理由って不器用ながらしっかり自分の考えを通そうと奮闘するところなんですよ。SEEDの時から私は彼のそんなところが好きで、同じく日和見と言われようと理想論だと揶揄されようと父上から受け継いだ意思を大事にするカガリとのペアが好きだったんですよねぇ。
これに対してキラは完璧超人なんでしょうけど、それ故に人間らしさをあまり感じられなかったんです(少なくとも私は)。そして周りに頼ることなく無謀なこともおいかぶって自分だけで何もかも無理難題を達成しようとするdestinyでの彼の姿にヤキモキしていたんだなと今なら冷静に思えるんです。
ただもっと冷静に考えれば突然戦争に巻き込まれヤキンドゥーエを終焉させただけで、子供だけにあんなとっ散らかった世界の安定や戦争根絶なんて無理よな〜と見直して思う訳です。
このシーンを見ただけでもdestinyが本来どんな時間軸で展開された話であり、彼らがどんな悲惨な出来事を終えた直後の少年かという背景を考えると見方が全然変わってくるなとSEEDFREEDOM通して再確認をしました。
本編に戻りますと、散々胡乱だ迷ってばかりと呼ばれていたアスランの真っ直ぐなパンチは弱り切っているにもかかわらず周りを頼らないキラに見事に喝を入れることに成功。
そして再び一致団結したアークエンジェルの面々はラクス救出へ。しかし艦もなくモビルスーツも失った彼らに反撃は許されないと思われたものの、オーブがこっそり彼らの愛機だったストフリやインジャ、そしてデスティニーを改修して保管していた。しかも艦もコンパス所持の最新艦「ミレニアム」を「接収された」と称して実質譲渡という形でゲット。そういうとこやぞオーブ
俺が見たかったデスティニーだ!!
立ち直りラクスを助ける決心をしたキラは、シンに対しても本当の意味で頼りにすることとなった。
そしてこの笑顔である
アコード達もキラ一行を迎え撃つのだが、その手を引き受けるのがデスティニーに乗ったシン。実はイモータルジャスティスを映画冒頭では駆っていたが元々アスランの系譜ということもあってかめちゃくちゃ嫌そうに乗ってました。
しかしデスティニー見た瞬間に「これなら勝てる!」と勇み、その言葉通りアコード相手にも無双。destinyでは見られなかったほどの鬼神ぶりで苦戦していたアコード達のMSを薙ぎ払っていく。
ここ以外でも本編でのシンは年相応のキラキラ少年となっており、自分を信じてくれるキラに懐いたりオードブルのご飯を皿いっぱいに乗せたりとその姿は犬そのもの。これにはルナも呆れ果てていた(しかし中の人は夫婦である)。
destinyでは妹を目の前で無くし信じていた人に裏切られ続けるなど悲惨なことしかなかったシン。本来は平和を願う心優しい性格であり、福田監督も明るい真っ直ぐな少年ということだったので、その姿が見れただけで泣きそうになったのはここだけの話である。
そしてシンに対する更なるサプライズといえば、アコード戦で見せた彼の心に住みつく魔物の存在ステラである。
シンが戦争中に出会ったエクステンデッドの1人であり、戦争のために矯正をかけられていた少女。彼女との出会いがシンをまた変えたのも事実であり、彼にとって忘れられない人間の1人でもあった。
アコードは他者の精神に干渉できるのだが、シンに干渉した時は心の中に存在したステラがこれを撃退。福田監督らしくコミカルにエンタメに描いてくれたが、私は声を上げないのに必死だったのを今でも忘れない。
非常にコミカルであったものの、このシーン1つとってもシンは過去を忘れるわけでもなく、引きずるわけでもなく自分の中の一部として「決着」をつけ自分の足で歩くことを決めた姿でもあり、アコード達が掲げる思想へのアンチテーゼになってるなぁと思ったり。うますぎるよ福田さん
おもしれー男と愛とクロスアンジュ
戦いも最終局面に入るころ、アスランはというとインジャで敵MSのリーダーと対峙。しかし心が読める相手ということもあり苦戦していたかと思うと、機体の操作はなんとカガリがリモートで対応。虚をつく形で流れを掴み、さらに心の中のカガリを見せつけ当惑させることで撃破。
キラはアコードの首領ともいえるオルフェと対峙。彼のMSにはイングリッドという女性と二人乗りで迎え撃ち、どんどん追い込まれるキラ。
そこにやってきたのはアンジュー
いやライダースーツのラクス
キラが開発していたストフリ向けの強化パックみたいなものと合体し、キラさんもオルフェ同様に2人乗り体制で交戦。そして機体から放たれるのはガンダム世界ではまず見ない放電攻撃に不思議なバリアフィールド、そしてコロニーぐらいの拠点なら真っ二つにできる超圧縮ビーム。ラクス様のあたりからおまえ出る作品(クロスアンジュと)まちがってない?
圧倒的な力と愛の力でオルフェを崩し、イングリッドはキラとラクスの姿を見てデスティニープランでは見れない世界を垣間見て涙を流す。そう、彼女はアコード達が望む世界では結ばれるはずのないオルフェのことを愛していたのだー。
その一方、オルフェはデュランダルが提唱したプランに則り世界を牛耳るためラクスとの契りを画策していた。そのためにキラを追い詰め、ラクスとの仲を割き手中に収めようとしていたのだった。
「必要だから愛するのではないのです、愛しているから必要なのです!!」
そんなオルフェをラクスは強い愛で否定し、彼に想いを寄せるイングリッドの心も射抜く。しかしいきなりの展開に会場はちょっと気後れした空気になったと感じたし、私は完全に「風向き、変わりそうねー」と某企業CEOみたいな顔になってたと思う。
アスランの変態具合(愛についてね)やライダースーツ、「オーブだから」だけでは誤魔化せない技術にオルフェの無理やり女を手に入れようとするムーブはまさにキモい髪型でにやにやして服のセンスもなく斜に構えてて女の扱いも知らない千年引きこもりの恥知らずなどこぞの遺伝子レベルで生理的に無理と言われた男そのもの。
ラクス様の一喝以降、私はもうこの映画を「ここ、クロスアンジュで見た!!」みたいな気分で見ていましたよ。
ただ逆に言えば、私ははじめてクロスアンジュを見た時に「これデスティニーでできなかったことを少なからずやろうとしたんかな〜」と視聴当時は思ったりしたんですよね。
はじめから人の運命が選別され虐げられる世界、その世界の否定と自分で歩む力こそが生きることというテーマはどうしてもデスティニーがチラついてました。
よくよく考えれば福田監督はガンダム以前にサイバーフォーミュラや電童などを手がけており、むしろエンタメに強い監督なイメージがあります。そんな監督がガンダムをモチーフにやりたかったのは寧ろクロスアンジュだったんじゃないか。そんな気さえしました。
20年という時間がキラと素直に握手できるまでに必要な時間だった
無印が放送されたのが2002年でその2年後にデスティニーが放送、そして2024年にSEED FREEDOMの封が切られたわけですがやはり学生時代の自分では冷静にデスティニーを咀嚼することはできず、ただただシンと一緒に辛い中でも頑張ろうとしているキラさんを否定するしかできませんでした。
そんな辛かった彼と喧嘩別れみたいな形になってしまい20年過ぎていたわけですが、クロスアンジュを経てC.Eにひとつの決着を見せてくれたこの映画はマジで凄いと思うんですよ。デスティニーが無ければこのエピソードは無かったし、クロスアンジュがなければこの世界線にも辿り着けなかった。そして20年を経て本音を見せ愛を叫ぶキラさんに私もはじめて握手ができたと思います。
そして本作はこう公開された時期もめちゃくちゃいいなと思うんですよ。エヴァンゲリオンもシンジくんが現実に帰ると共に呪縛から解き放たれ、グリッドマンユニバースでお祭り映画の何たるかの訓練が施された。まるで狙ったかのように、最後の平成の1ピースを拾ってはめ込むかのような映画じゃないかと思いました。
さんざんSEEDデスティニーについては「スパロボが正史」なんかと言われ続けてきましたが、やはり公式が1番彼らのことをわかってるというをまざまざと見せつけられたと共に、本当にこれで浮かばれると私は本心から思えました。
そりゃSNS等では謎技術など他にいろいろと言われるところもあるかと思いますが「そりゃクロスアンジュになったし」とか「そこはSEEDだからさ」とかいうところ含め、やはり20年という時間が作り出した空気感と追い続けたファンの練度は伊達ではないと思わざるを得ないのであった。